ふくらむちゃんの転職/吉田瑞季

ユニコーン同好会

ふくらむちゃんの転職

 東京駅グランスタのふくらむちゃんが転職するらしい。

 わたしがふくらむちゃんと出会ったのは、病気で会社を休職し、回復しようと動かない体を引きずって必死にもがいていた頃だった。

 その頃関西に自宅があったわたしは、リハビリも兼ねて一人で東京にやってきていた。若干無謀だったなと思うのだが、案の定帰りの新幹線に乗る手前、東京駅でヘロヘロになりフラフラと地下街を歩いていた。

 そんな時にふくらむちゃんはわたしの前に現れた。

なんかいるな……(撮影・筆者)

 フカフカの巨大な柱として。

 「ふくらむちゃん柱」。そう題された謎の物体……下の方にちょこんと小さな顔がついている。なんだ、これは。

顔があった(撮影・筆者)

 よくわからないが、気づいた時にはわたしは巨大なフカフカに抱きついていた。

 フカフカの柱は、ヘロヘロのわたしを受け止め、包み込んだ。

 平日の東京駅の地下。人々は、チラ見したりしなかったりして通り過ぎていく。

 それが、グランスタのマスコットキャラクターだと知ったのは、関西に帰ってからである。

 ふくらむちゃんは、手のひらサイズにも、巨大な柱にもなる、不定形の存在だ。

 白くてモフモフフカフカしていて、下の方に小さく顔がついていれば、どんな形でもそれはふくらむちゃんだ。

 ふくらむちゃんは姿だけでなく内面もなんかフワフワしていた。

 Twitterを見ていると、ふくらむちゃんはグランスタの宣伝業務をしているはずなのに、なんだかよくサボ……自由に働いていた。

 食いしん坊で、けっこう適当で、あははーと笑っている。

 不定形なふくらむちゃんは、欠けだらけだったわたしの心にニュルッとフィットして、わたしはたちまちファンになった。

 そんなふくらむちゃんが、グランスタから去るという。

 今までも、肩肘はらずにグランスタを宣伝し、目ざといファンでなくては気づかないような存在であったふくらむちゃんだったが、本当にいなくなってしまうのか。

 しかし、ふくらむちゃんの報告によれば、ふくらむちゃん自身のキャリアアップを考えた上での決断らしい。

 ふくらむちゃんはもっとふくらんでいく。ふくらむちゃんには東京は狭くなってしまったのかもしれない。

 それならば、応援しなければならないだろう。

 わたしもふくらむちゃんのように、フカフカふくらむ不定形の存在でありたい。

 そう思わせてくれたふくらむちゃんの、益々のふくらみを祈るばかりである。

・著者プロフィール
吉田瑞季
オタクに夢を売る仕事をしているオタク
演劇・古典芸能・ヤクザ映画・詩歌

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