わたしは(あなたと同じように)いろんな要素からできている人間で、その要素のひとつにアロマンティックアセクシュアルであるということがある。
アロマンティックは他者への恋愛感情を持たないこと、アセクシュアルは他者への性的感情を持たないことで、つまりわたしは恋愛にも性愛にもまるで興味がない。
そのことを表明すると、恋愛すると人生が変わるよとお説教されたり、恋愛しない人なんていないよと決めつけられたりする。
そうした反応のひとつとして、「恋愛に興味がない人は本当は他にもいるけど、みんなちゃんと周りに合わせて恋人作ってるんだよ(だから自分と付き合え)」というアクロバティックなものがあった。
それを聞いたときわたしは、じゃあ自分も恋愛に興味がないことを隠して生きていこうとは思わなかった。その反対だ。
わたしは今、仲間も味方もいなくて孤立していて、おまえはおかしいって言われ続けて心細くなっているけれど、他にも同じような思いをしている人がいるはずなんだ。
じゃあその人に、わたしはここにいるよって伝えたい。
わたしは自分の気持ちに従って生きてるよ、生きられてるよって見せてあげられるように、自分を曲げずに頭を上げて生きていきたい。
そう思った。
そう思いながら今も生きている。
いつの間にかわたしは孤独ではなくなり、仲間も味方もいっぱい得ることができて、アロマンティックアセクシュアルライフを謳歌している。
でももっと言えば、わたしに似た人が一人もいなくても、世界でたった一人でも、わたしはこの世にこんな人間がいることの証明でありたいと思っている。
これはそんなわたしの証明です。
・著者プロフィール
川野芽生
短歌、小説、エッセイ、評論、論文などを書いています。
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