天才の仕立て人 ── 歴史上のファン、プロデューサー、後継者、配偶者(講師:かげはら史帆)

授業概要

歴史上には「天才」と呼ばれる数多くの芸術家がいます。

ですが、天才は突然変異的に世の中に現れるわけでも、彼(女)ひとりだけでその偉業を成し遂げるわけでもありません。

講師はこれまで、歴史上の音楽家やバレエダンサーを題材にした本を書いてきた文筆家ですが、関心の主軸はいつも「天才」本人よりもその「周辺の人びと」にありました。

この授業では、これまで講師が単著として刊行した4冊の本(ノンフィクション、評伝、小説など)をベースとしつつ、本に掲載しきれなかった図版やエピソード、関連書籍を駆使し、「ファン」「プロデューサー」「後継者」「配偶者」という4つのテーマを深堀りしていきます。

歴史上の話がメインにはなりますが、推し活やジェンダーなど、現代に通じるテーマや文献にも積極的に触れていきます。

また、この授業では、講師が「なぜこの本(人物)を書いたか」「なぜこのジャンル(スタイル)を選択したか」「何を意識して書いたか(あるいは書かなかったか)」などにも言及します。

歴史上の人物や才能ある人物を扱った創作をしたいと考えている方、どういうスタイルで手掛けようか迷っている方、リアリティの出し方に悩んでいる方にとってヒントになることを願っています。

※受講にあたって、書籍の読了は必須ではありません。

講師プロフィール

かげはら史帆

文筆家。
1982年、東京郊外生まれ。法政大学文学部日本文学科文芸コース卒。一橋大学大学院言語社会研究科修士課程修了。
著書『ピアニストは「ファンサ」の原点か – スターとファンの誕生史』(ノンフィクション/河出新書)、『ニジンスキーは銀橋で踊らない』(小説/河出書房新社)、『ベートーヴェンの愛弟子 – フェルディナント・リースの数奇なる運命』(評伝/春秋社)、『ベートーヴェン捏造 – 名プロデューサーは嘘をつく』(ノンフィクション/単行本:柏書房、文庫:河出文庫)。ほか音楽雑誌、文芸誌、イベントプログラム、ウェブメディアに小説、エッセイ、書評、インタビューなどを寄稿。
屋号「ラウラ文庫」で同人活動を行う。

スケジュール

第1回 「ファン」──近代の芸術家と「ファン」の形成

2026年1月5日(月) 19:30-21:00

──『ピアニストは「ファンサ」の原点か スターとファンの誕生史』河出新書、2025年

推し活全盛期の昨今ですが、そもそも「ファン」は歴史上いつどこで生まれたのでしょうか。また、芸術の受容者(たとえばクラシック音楽の聴衆)は「ファン」とみなしうるのでしょうか。女性の「ファン」は、社会的にどのような扱いを受けてきたのでしょうか。

歴史上に遍在する彼(女)たちの姿を追いながら、「ファン」の成立背景や様相、近代史における推し活事情などに迫ります。上記の本では詳しく触れられなかった「ベートーヴェンの同時代のファン」「リストファンの女性伝記作家」「日本語で読めるファン研究の文献」についても触れたいと思います。

第2回 「プロデューサー」──アーティストの周辺人物が果たす役割

2026年2月9日 19:30-21:00

──『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』柏書房/河出文庫、2018年/2023年
貴重な史料を破棄、あるいは改竄する。研究者であれば許されざることですが、それがもしアーティストの活動を支える周辺の人びとであれば、彼女/彼のイメージを守るのはむしろ当然の行為であるともいえます。

ベートーヴェンの秘書、アントン・フェリックス・シンドラーはなぜ、ベートーヴェンの筆談用ノート(=会話帳)の改竄に手を染めたのか。書籍には掲載されていない、会話帳の実際の改竄痕などもお見せしながら、その手法や具体的な改竄内容に迫ります。また、ベートーヴェンのパブリックイメージの形成に貢献したシンドラー以外の人びとについても触れたいと思います。

第3回 「後継者」──弟子というアイデンティティ

2026年3月9日 19:30-21:00

──『ベートーヴェンの愛弟子 フェルディナント・リースの数奇なる運命』春秋社、2020年
音楽史は限られた数の天才によって形成されているように見えがちですが、実際には多くの音楽家の相互影響によって成り立っています。歴史に残らなかった人物が、実はその時代の本質を内包している場合も多くあります。

講師の「推し音楽家」であるフェルディナント・リースは、今日では知名度の高い音楽家ではありませんが、生前は作曲家やピアニスト、またベートーヴェンの愛弟子としてきわめてよく知られた人でした。彼の生涯と作品を追いながら、クラシック音楽史の諸相をこれまでになかった角度から紐解きます。また、本書を執筆するにあたって講師が直面した、あまり世に知られていない人物の評伝を書くことの困難についても触れたいと思います。

第4回 「配偶者」──悪妻と呼ばれた女性たち

2026年4月6日 19:30-21:00

──『ニジンスキーは銀橋で踊らない』河出書房新社、2023年

男性の芸術家と女性の配偶者との関係はしばしば人の興味を惹き、これまでも数々の研究や創作が行われてきました。そうした営みのなかで、配偶者の女性はしばしば「悪妻」として描写されてきました。

上記の小説の主人公でありバレエダンサー・ニジンスキーの妻であるロモラも、悪妻と呼ばれてきた人物です。しかし当然ながら、それは一面的な見方にすぎません。ミュージカル『モーツァルト!』(シルヴェスター・リーヴァイ作曲/ミヒャエル・クンツェ脚本)、小説『ハムネット』(マギー・オファーレル作)、映画『チャイコフスキーの妻』(キリル・セレブレニコフ監督)なども取り上げながら、それぞれの作品における芸術家と配偶者の関係性の描写や、史実上の実際について迫ります。

本書は当初、ノンフィクションとして書き始めましたが、最終的にリライトを行った上で小説として刊行しました。なぜそうした経緯を辿ったのかについても触れたいと思います。

授業詳細

講師:かげはら史帆

参加費:講義¥3000/回

回数:全4回

授業方法:zoomによるオンライン授業

日時:1月5日(月)、2月9日(月)、3月9日(月)、4月6日(月)

時間:19:30-21:00

部分受講:可

・全て1ヶ月間視聴可能アーカイブ配信あり

・当日参加できなくてもOK

・アーカイブのご案内はお申し込みより2営業日以内にお送りいたします

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