お化け、妖怪、もののけ、あやかし。
さまざまな呼び方をされますが、不思議な力や姿をもつ、人ならざるものたちはいつの時代も語られてきました。
「古典」といわれる作品のなかにも、そうしたモノたちがしばしば現れ、物語にあやしげな魅力をそえています。
『源氏物語』では光源氏や女君がもののけに悩まされ、六条御息所の生霊かと疑います。『今昔物語集』では、百鬼夜行に遭遇した都人たちの恐怖が語られます。安倍晴明に代表される陰陽師の存在も、近年よく知られるところです。
学校の「古典」の授業では正面から扱われませんが、古典こそ怪異、不思議の宝庫と言っていいでしょう。そうした怪しい、不思議な世界は、一作者の創作ではなく、同時代の信仰や俗信、また先行する文芸の影響をうけながら語られてきました。
そして現在の創作物にも、少なからず影響を与えています。
しかし、現在の我々が知っている「妖怪」の多くは、その後、江戸時代に描かれた絵や、近代に創作された伝承をとりこんで変化しています。それ以前のお化けたちは、皆さんの想像とはすこし違った姿かもしれません。
今回は、有名な「古典」作品の中から、ちょっと変わった視点で「お化け」の話をとりあげてみました。「古典」にお化けたちはどのように現れるのか。さらにその後、どのように語り伝えられ、私たちのよく知る姿になっていくのか。あやしくも楽しい「古典」の魅力とあわせてご紹介できればと思います。
久留島元(くるしま はじめ)
1985年、兵庫県生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(国文学)。現在は大谷大学文学部助教。関西現代俳句協会、結社「麒麟」に所属。専門は中世日本文学、特に天狗など怪異説話。高校時代から俳句の実作、評論も行う。著書に『天狗説話考』(白澤社)、共著に京都仏教説話研究会『説話の中の僧たち』(新典社)、大阪俳句史研究会編『大阪の俳人たち7』(和泉書院)、東アジア恠異学会編『怪異学講義 王権・信仰・営み』(勉誠出版)、同編『怪異から妖怪へ』(文学通信)など。
第1回「源氏物語の天狗」
2026年3月10日(火)19:00-20:30
有名な『源氏物語』に天狗の記述があることは、あまり知られていません。そもそも天狗といえば恐ろしい山の怪異か神霊に近いイメージで、雅な『源氏物語』の世界にそぐわないと思われそうです。しかし、最終巻では、第三部「宇治十帖」のヒロイン・浮舟が正気をうしなってさまよう描写として「天狗・木霊のしわざか」と形容されます。わずか一カ所ですが、ここから平安時代の天狗像をひもといてみたいと思います。
第2回「蛇になる女」
2026年4月7日(火)19:00-20:30 ※変更の可能性あり
「道成寺縁起」は、男を慕う女が蛇になってしまう物語です。この物語は「安珍・清姫物」として、絵巻や芝居のなかで一大ジャンルを形成しました。映画『国宝』で有名になった舞踊「二人道成寺」も、この話に取材しています。それほどよく知られた物語ですが、本来は法華経霊験を説く仏教説話でした。説話の変遷を追いかけると、蛇と女にまつわる奇妙な偏見(バイアス)の形成と定着が見えてきます。
第3回「芭蕉の幽霊」
2026年5月12日(火)19:00-20:30 ※変更の可能性あり
死者の霊をあらわす「幽霊」という言葉は、能によって広まったといわれます。能は、源平合戦で死んだ武者の霊や、山河をことほぐ神々、さらに山姥や鵺のような怪物など、しばしば人と人ならざるものとの交流を主題とします。『芭蕉』では、芭蕉、すなわちバナナの木の精霊が、僧侶に対して草木も成仏できるのかと問いかけます。人と異類に違いはあるのか、僧はどう応じるのか。僧と芭蕉の問答はどこへ行き着くでしょうか。
第4回「俳諧と妖怪」
2026年6月9日(火)19:00-20:30 ※変更の可能性あり
俳諧は、和歌を上の句(五七五)と下の句(七七)に分け複数の人が詠み合う、連歌の一形式として始まりました。やがて芭蕉らによって詩的達成を遂げていきますが、もともと和歌が避けてきた滑稽や俗っぽさを志向した俳諧は、地方の怪談奇談や、笑話などとも相性のよい文芸でした。そして近年、俳諧と妖怪との深い関係が、研究者の注目を集めています。最新の成果をもとに語ります。
講師:久留島元
参加費:講義¥3000/回
回数:全4回
授業方法:zoomによるオンライン授業
日時:3月10日(火)、4月7日(火)、5月12日(火)、6月9日(火)
時間:19:00-20:30
部分受講:可
・全て1ヶ月間視聴可能アーカイブ配信あり
・当日参加できなくてもOK
・アーカイブのご案内はお申し込みより2営業日以内にお送りいたします
