「歴史にロマンはない。創作と史実は峻別して考えなさい」「歴史創作は人間の心のひだに分け入る秘訣を教えてくれる」という歴史学者の発言に接したり、「ベストセラー歴史小説をどう読むべきなのか教えてほしい」「歴史は物語だよね?」という読者のことばに接したりして、「史実」と「物語」にどのように接するべきなのか混乱したことのあるかたは少なくないでしょう。
歴史学には明確に、史料にもとづいてわかりえないことを書かない、史実をねじ曲げることはしない、という研究倫理がありますが、賢明に紋切り型を退けて生の実相への洞察をゆたかに示す歴史家による歴史叙述と、緻密な考証によってリアリティのレベルを適切に見定めた作家による歴史創作には多くの共通点があります。
Season1につづいて、創作する人のための歴史叙述の心得と、新しい表現の可能性をともに考える講座です。今期は作中世界と登場人物にリアリティを加えるジェンダー表象に注目して、マンガ・散文・韻文の作例をそれぞれ紹介します。具体的な作例にもとづいて思考を深める機会をもちましょう。
受講生のみなさん、ぜひ関心をもった時代や書いてみたいジャンルや物語について、また取り上げてほしい作例についての質問をお寄せください。質疑応答を行う場も設定します。
中西恭子(なかにしきょうこ)
東京生まれ。津田塾大学国際関係研究所特任研究員(非常勤講師兼務)。古代ローマ宗教史・宗教学宗教史学。東京都立国立高校、東京大学文学部、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程・博士課程修了(博士(文学))。日本学術振興会特別研究員(PD)、東京大学大学院人文社会系研究科研究員を経て現職。明治学院大学ほか非常勤講師。著書に『ユリアヌスの信仰世界 万華鏡のなかの哲人皇帝』(慶應義塾大学出版会)、『The Illuminated Park 閃光の庭』(なかにしけふこ名義、書肆山
田)、訳書にエドワード・J・ワッツ著『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』(白水社)など。『ユリイカ』『現代思想』(青土社)に寄稿多数。
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第1回 歴史研究と歴史創作のあいだ ジェンダー編
2024年1月24日(水)19:00-20:30
歴史学側ではどのように歴史研究と歴史物語・歴史創作の関係をとらえているのかについて主な見解を紹介します。その上で、歴史創作において登場人物のジェンダーとセクシュアリティをなぜ主題とするのか、また、どのように扱うのかを考察します。
第2回 韻文作家像のアダプテーション
2024年2月21日(水)19:00-20:30
日本語近代文学における戦争と暴力とジェンダーとセクシュアリティの問題を正面から扱った作品として、清家雪子『月に吠えらんねえ』を主な事例として、韻文と韻文作家像のアダプテーションの可能性をとりあげます。
第3回 「小さき者」の語りをどのようにとらえるか
2024年3月27日(水)19:00-20:30
「小さき者」「声なき者」としての女性やこどもの声を収録して再話するときの留意点について、『戦争は女の顔をしていない』の著者、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチらの「聞き書きの文学」について考察します。
第4回 「大きな物語」とジェンダー
2024年4月24日(水)19:00-20:30
叙事詩的世界の構築と「大きな物語」は魅惑的な主題です。「大きな物語」のディテールが改変された世界を想定することで、ジェンダーと公衆衛生と制度の現実への問題提起と史料の読み直しを迫る事例として、よしながふみ『大奥』を検討します。
講師:中西恭子
参加費:講義¥3000/回
回数:全4回
授業方法:zoomによるオンライン講義
日時:1月24日(水)、2月21日(水)、3月27日(水)、4月24日(水)
時間:19:00-20:30(終了時間が延びる可能性がございます)
部分受講:可
・当日参加できなくても参加できます
・1ヶ月間視聴可能アーカイブ配信あり
・アーカイブのご案内はお申し込みより2営業日以内にお送りいたします