2020年の関白宣言改め継続的なパートナーシップのための確認事項 (吉田瑞季)

吉田瑞季

※この詞はさだまさし『関白宣言』をもとにしたのものです。原詩は引用で示し、また『関白宣言』の歌詞をそのまま利用した個所は太字になっています。適宜原曲を聴きながらお楽しみください。

お前を嫁にもらう前に
言っておきたいことがある

あなたと継続的なパートナーシップをはじめる前に
確認しておきたいことがある

かなり厳しい話もするが
俺の本音を聞いておけ

かなり細かい話もするが
納得するまで話し合いたい

俺より先に寝てはいけない
俺より後に起きてもいけない

睡眠は健康の基盤なので
お互いに気兼ねせず休める環境を作ろう

めしは上手くつくれ
いつもきれいでいろ

好きなものを好きに食べよう
好きな格好をしよう

できる範囲で構わないから

できる範囲で構わないから

忘れてくれるな
仕事もできない男に
家庭を守れる
はずなどないってことを

忘れてくれるな
人間の価値や生きる理由は
何ができるか できないかとは
関係がないってことを

お前にはお前にしか
できない事もあるから
それ以外は口出しせず
黙って俺についてこい

あなたの人生はあなたのもの
パートナーだからと言って
わたしに意見するのを
ためらうことはない

お前の親と俺の親と
どちらも同じだ大切にしろ
姑小姑かしこくこなせ
たやすいはずだ
愛すればいい

わたしがどこで 誰から生まれたか
誰を愛するか 愛さないか
あなたには関係のないこと
他人は他人だ
気にしなくていい

人の陰口言うな聞くな
それからつまらぬ
シットはするな

誰かを嫌いになったっていい
わたしの言動が気になったら
教えてほしい

俺は浮気はしない
たぶんしないと思う
しないんじゃないかな
ま、ちょっとは覚悟しておけ

パートナーシップには必ずしも性行為の独占を含まない
第三者との交際や性行為については
二人の意見や気持ちを言い合って
別途決めよう

幸福は二人で育てるもので
どちらかが苦労してつくろうものではないはず

幸福は二人で育てるもので
どちらかが苦労してつくろうものではないはず

お前は俺の処へ
家を捨ててくるのだから

あなたはわたしといるために
何ひとつ捨てなくていいのだから

帰る場所はないと思え
これから俺がお前の家

ここは二人の家だけれど
あなたの居場所はあなたが決める

子供が育って年を取ったら
俺より先に死んではいけない

いろいろあって年を取るだろう
いつまで一緒にいるかわからないけど

例えばわずか一日でもいい
俺より早く逝ってはいけない

生きることも死ぬことも
自分ではどうにもできない

何もいらない 俺の手を握り
涙のしずく ふたつ以上こぼせ

たとえ一人で 死ぬ日が来ても
誰の涙も 見なくて済むし

お前のお蔭で いい人生だったと
俺が言うから 必ず言うから

自由に生きた いい人生だったと
勝手に言うから 多分言うから

忘れてくれるな 俺の愛する女は
愛する女は生涯お前ひとり

忘れてくれるな いつか別れが来て
ほかのだれかと出会ったとしても

忘れてくれるな 俺の愛する女は
愛する女は生涯お前 ただ一人

忘れてくれるな 誰かのたった一人になるより
あなたが望むように生きて 生きて

解題

『関白宣言』は1979年にリリースされた曲です。
だいたい40年前ですね。
40年前に書かれた結婚についての歌詞を、現代に合わせて書き直そうと思ったら、ほとんど原型が残りませんでした。40年あれば世界は変わるものです。
『関白宣言』批判というのはもうやりつくされたことかもしれませんが、どんどん人々のライフスタイルや常識が更新されていく中で、「今」の『関白宣言』を書き残しておく、というのは面白いかなと思いました。
「2060年の関白宣言」も、見てみたいですね。

1979年当時でも、この歌詞のような「亭主関白」は前時代的な存在であり、さだまさしはそういう家父長制的な男性優位の結婚のありかたを、カリカチュアとして描いています。
男はもう亭主関白ではいられない。強い夫として三歩後ろに妻を従えるのではなく、妻と二人で並んで歩いていくような夫婦の姿を逆説的に、あるいは男性側の自虐として、表現しようとしています。

今『継続的なパートナーシップのための確認事項』として2020年バージョンを書くにあたり、次のことを念頭に置きました。
・結婚制度に限定しないこと
・語る側、語りかけられる側の性別やセクシュアリティを限定しないこと
・命令形を使わないこと
ただし、「忘れてくれるな」だけは、原詩の特徴的なフレーズなので、残しました。
また、「幸福は二人で育てるもので/どちらが苦労してつくろうものではないはず」という歌詞も原詩のまま残しました。さだまさしが原曲で表現したかったコアの部分であり、40年たっても人と人との関係において重要な言葉だからです。
ただ、「二人で」という部分はできれば変えたいなと思っていました。
パートナーシップは二人に限定されるものではなく、三人、四人、それ以上でもありうるからです。

『関白宣言』を40年前のマジョリティの感覚のまま、素敵で笑える愛に溢れた結婚の歌だと受け入れることは難しくなりました。
さだまさしが、家父長制的結婚と、男らしさに縛られた男たちを戯画的に笑い飛ばそうとしていたとはいえ、なおこの歌詞からは、あまりにも多くの人や家族のあり方が零れ落ちており、また男性にも女性にも呪いの言葉になるような個所がたくさんあります。
もし、あなた自身やあなたの周りの人がそのような結婚観をまだどこかにもっているなら、少しずつゴミ箱に捨てていくのがいいでしょう。

・著者プロフィール
吉田瑞季
オタクに夢を売る仕事をしているオタク
演劇・古典芸能・ヤクザ映画・詩歌

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