講師:川野芽生
天上に竜ゆるりると老ゆる冬われらに白き鱗(いろくづ)は降る(川野芽生)
冬の空に、年老いた一頭のドラゴンが、白く鱗を降らせるーー私たちは、その竜の、老いて衰えてもなお気高くひかる赤い目さえ見ることができるような気がする。
短歌は、その短い言葉の並びの中で、宇宙よりも広い箱庭を作り上げることができる。
あなたも、あなただけに見える景色を、短歌の形で世界に出現させてみませんか?
小説や詩のように、たくさんの言葉を重ねる必要はありません。
自分が自分らしい、使いやすいと思える言葉で、自分が見える世界、自分自身がすてきだ、かっこいい、かわいい、楽しい、悲しい、切ない、などのように心動いたことを描けばよいのです。
「恋の歌だけじゃない短歌教室」は、アセクシュアルのフェミニスト歌人による、今までの短歌のイメージにとらわれない短歌作りワークショップです。
講師は、うつくしく幻想的な世界を描いた短歌で知られる歌人、川野芽生。
短歌の読み方、作り方を、講座2回と歌会(ディスカッション)4回を通して楽しく学びましょう。
他の受講者との交流を通して、今まで見えなかった世界の面白さが、見えてくるかもしれません。
こんな人におすすめ
・言葉を研ぎ澄ましたい人
・短歌を通じて、普段見ている世界を新しく捉え直したい人
・フェミニズムやクィアの詩・短歌・文学に興味がある人
・自分の幻想や想像を言葉にしてみたい人
・恋愛の歌(相聞)や自然の歌、日常の歌以外に短歌にできることを知りたい人
・初心者から、今まで一人で短歌を作っていた人、経験者まで歓迎です
スケジュール・講座内容
第1回 1月19日(水)
「講義その1。」
よい歌を詠むには、まず「読む」ことから。
現代のすてきな歌を講師が解説しながら皆さんと鑑賞します。はじめて短歌に触れる人でも、よい歌をよいと感じるアンテナを育てることを目指します。
第1回は現代の中でも最近のもの、今を生きるわたしたちにとって身近だと感じられやすいものを取り上げていきます。
「短歌ってどう読んだらいいのかわからない」という方も、まずは聞いてみてください。
「なるほど」と思ったら、あるいは「いや、私の感じ方は違うな」と思ったら、それはあなたの目が短歌に対して開かれた証です。
「詠む」ことには興味がないけど、短歌を「読み」たい! という方も大歓迎です。
おすすめの歌集など、本の紹介もしていきます。
第2回 2月2日(水)
「講義その2。」
引き続き短歌や歌集の紹介をしていきます。
第1回より少し古め(戦後〜)の歌を取り上げます。
文語や旧仮名の歌はとっつきにくい、と思っている方にもおすすめです。
【宿題:短歌を作る(自由詠=テーマや決まりなく好きに短歌を作る)】
第3回 2月16日(水)
「歌会・自由詠(テーマや決まりなく好きに短歌を作る)」
歌会をします。歌会とは、参加者が作った歌をもちより、みんなで意見を言い合う場です。
提出してもらった歌を匿名で並べ、いいと思った歌に投票し、批評してもらいます。
各自の歌に対する批評がもらえ、自分でも他の人の歌への批評ができるようになります。
他の人の短歌を鑑賞し、自分の短歌について他の人が話すのを聞くことで、いろいろな視点から短歌のよさや改善点がわかるようになります。
【宿題:短歌を作る(題詠=事前に決められたテーマ・題に沿って歌をつくる)】
第4回 3月2日(水)
「歌会・題詠(事前に決められたテーマ・題に沿って歌をつくる)」
歌会をします。今回は題詠(事前に出した題に沿って歌を出すこと)です。
同じ題でもいろいろな短歌の作り方があります。
一人ひとりがどのように短歌を作り、そして読むかを楽しめるようになりましょう。
【宿題:短歌を作る(自由詠)】
第5回 3月16日(水)
「歌会・自由詠」
今までもらった批評を踏まえ、再び自由詠の歌に挑戦してみましょう。
前の時より、歌を作るのも人の歌を読むのも上手くなっているはずです。
【宿題:短歌を作る(題詠)】
第6回 3月30日(水)
「歌会・題詠」
最後の歌会です。再び題詠の歌会をします。
そろそろ歌会にも慣れてきます。
これからは、講師の手助けなしに自分で歌会を開けるようになるはずです。
講座概要
開講日:2022年 1/19(水)・2/2(水)・2/16(水)・3/2(水)・3/16(水)・3/30(水)
開講時間:19:30-21:30
受講料:¥3000/回
授業方法:zoomによるオンラインワークショップ
部分受講:可
講師プロフィール
川野芽生
歌人、小説家、大学教員。アセクシュアルのフェミニスト。
セクシュアルハラスメントを題材にした短歌連作「Lilith」で第29回歌壇賞受賞。2020年、第一歌集『Lilith』(書肆侃侃房)出版。翌年、同歌集にて第65回現代歌人協会賞受賞。
平安時代から「短歌といえば恋愛」と言われる中で、恋愛じゃない歌を追究している。
フェミニズムを題材にした歌、端正な文語を駆使した幻想・ファンタジー系の歌が得意。
代表歌
思惟をことばにするかなしみの水草をみづよりひとつかみ引きいだす
アヴァロンへアーサー王をいくたびも送る風あり千の叙事詩に
天上に竜ゆるりると老ゆる冬われらに白き鱗(いろくづ)は降る
harassとは猟犬をけしかける声 その鹿がつかれはてて死ぬまで
詩はあなたを花にたぐへて摘みにくる 野を這ふはくらき落陽の指